Vol.302

 

HOME


絶賛イヤイヤ期」からのSOS

普光院 亜紀(保育園を考える親の会代表)

☆枝豆の薄皮をむく2歳児
 「絶賛イヤイヤ期」というのは、「絶賛上映中」から連想された言葉で、「イヤイヤ期が最高潮」という意味です。先日、会員メーリングリストで「イヤイヤ期」についての相談があったとき、こんな言葉も飛び出しました。
  相談者のお子さん(2歳)は、朝ごはんをなかなか食べない、好物の枝豆を出すと薄皮を1個ずつむいて食べる、ごはんの途中で絵本を読んでとせがむ、ごはんが終わったら食器を洗いたがる、靴をはかない(長靴ならはく)、2個ある鍵を自分でしめたがる(その他何もかも自分でやりたがる)ということで、お母さんは、「朝は時間との戦いで、保育園を出てから駅まで猛ダッシュ、ひどいときは勤務開始時間1分前に会社に着いて、ぎりぎりセーフという綱渡りな毎日を送っています。夕方・夜は比較的余裕があるのでイヤイヤされても対応できるのですが、時間がない朝は、苦痛で苦痛でたまりません」と綴っています。
これに対して、壮絶なイヤイヤ期体験とその対応策が次々と寄せられました。夜寝るときに次の日に着ていく服を着て寝る、朝ごはんは一口食べたらいいことにする、自転車やバギーに乗せて道草んしで園に直行、電動自転車で失った時間を取り戻す…。ちなみに、朝食に「コーンフレークに牛乳をかけて食べる」と主張してその牛乳しか飲まないお子さんは、保育園で給食をおかわりして食べているそうです。お母さんは3人目の子育てで「脱力育児」をめざすようになったと書いていました。「手抜き」をしようということではなく、完璧をめざさず、できる範囲でやっていくことで、子どもとの関係もよくなるという悟りでした。

☆保育園ではどうしているのか
  保育所保育指針は、この時期の保育について、子どものやりたい気持ちを尊重し、応答的に関わり、適切な援助をするようにと書いています。
 保育園では「イヤイヤ期」の子どもが集団になっているわけですから、家庭よりもすごいことになっているのではないかと思いきや、多くの親たちが、家では食べないわが子が保育園ではモリモリ食べていたり、お友達と一緒に見の回りのことをできていたりするのを見て驚きます。
  先日また認可保育園で子どもを恫喝(どうかつ)して言うことを聞かせる虐待まがいの保育が問題になりましたが、多くの保育現場では、一人ひとりの子どもの理解に努め、気持ちを受け止めながら、子どもが見通しを持って生活していけるように、さまざまな工夫をされていると思います。
  保育園の「イヤイヤ期対応」が家庭と違うところは、まず、子どもの気持ちを理解し受容する保育士の専門性・経験があるという点です。上の相談者の記述を読んだだけで、子どもの気持ちがわかる保育士は多いはずです。子どもの自己主張を「そうなんだね」と受け止め、その意欲や発達に応じてさりげなく援助する保育の技に、保護者から感嘆の声も聞かれます。
  次に、保育園では、子ども中心に生活を組み立てる体制や環境が整えられていて、保育士は保育に専念できるということもあります。これは、仕事と家事と育児の三立を迫られる家庭の状況とは違っています。もちろん、どの園にも余裕があるわけではありませんが、子どもが枝豆の薄皮をむくのを見守れたら素敵だなと思います。
  さらに、保育園ではお友だちによる「きょうだい効果」もあります。お友だちがすることを見てマネをしたり一緒にしようとするうち、自然に前に進んでいたりします。家庭も以前は家族の人数が多く、そんな「小さな社会」になりえていましたが、今は親と子供が1対1で向き合う場面が多く、対立関係にもなりがちです。
  なお、家庭では子どもが親に甘えたい、あるいは親との時間を引き伸ばしたくて粘っている姿もありますが、これは打つ手がありません。
  そんな複雑さもある「イヤイヤ期」の子育てですが、保育園での保育が家庭での解決のヒントになることも少なくありません。ここでも、保育園は子育ての強力なサポーターだと思います。

『保育界』2019

 


幼児にタピオカ 要注意   〜勢いよく吸い喉に詰まらせるおそれ〜

 若者を中心にブームのタピオカドリンク。専門店のほか、商品やメニューに取り入れるレストラン、カフェも増えている。タピオカは大粒で、もちもちした食感が特徴だが、かんだり、飲み込んだりする力が未発達の幼児や児童がドリンクを飲むと、誤って喉に詰まらせるおそれも。メーカーも注意喚起しており、安全な飲み方を心掛けたい。
タピオカはイモの一種、キャッサバが原料。カラメルなどで黒に着色し、固めてゆでる。粒の大きさは直径1センチ前後。店によってタピオカの弾力や粒の大きさも異なるが、ミルクティーなど甘い飲み物に入れ、太いストローを使って飲む。
喉の奥は食べ物が通る食道と、息を吸ったり吐いたりする気管の二つに分かれる。食べ物が誤って気管に入る(誤嚥(ごえん))ことのないよう、飲み込むタイミングに合わせ、気管の入り口(喉頭(こうとう))に「ふた(喉頭蓋(がい))がされる。
しかし、飲み込むタイミングを意識できない速度で一気に食べ物が入ると、気管にふたがされずに誤って食べ物が入って詰まり、窒息する時がある。
大人は吸い込む力を調整し誤嚥を防いでいるが、幼い子どもは勢いよく吸い込む傾向があり、気管をふせぐリスクが高い。加えて、子どもは気管の入り口が狭く、小学生の直径は1センチほど。平均的なタピオカとほぼ同じで、詰まりやすい。
また、タピオカは表面がつるつるし、食感がもちもちで子どもの歯ではつかまえづらく、細かく砕くのは難しい。