Vol.301

 

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みんな必要? 保育園の昼寝

 昼下がり、各地の保育園には静かなひとときが訪れる。昼寝の時間となり、0〜5歳児の子どもたちは各部屋で1〜2時間程度の眠りに就く。保育園では当たり前とされてきた光景だが、近年、年齢が上がった4、5歳児の昼寝をやめる園が出てきた。「3歳以上になると昼寝を必要としない子も出てくる」と指摘する専門家もいる。

☆夜更かし助長も
 8月下旬の午後、東京都足立区立鹿浜こども園。給食を終えた4、5歳児クラスでは、遊びの時間が続いていた。この日は地域の外部講師を招き、手品や手遊びを約1時間教えてもらった。その後はブロックや絵本、お絵描きなど、それぞれが好きな遊びを楽しんだ。その間、0〜3歳児クラスの子どもたちは、別の部屋で昼寝をしていた。
 同区は「昼寝が夜更かしにつながる可能性がある」として2011年度、区立保育園やこども園の5歳児クラスで昼寝を中止した。2年後からは4歳児クラスもやめている。預かり時間が長かったり体調が悪かったりする子どもについては、個々の状況に合わせて休息を取る。園長は「4、5歳児になると体力もついてきて、昼寝の必要がない子もいる。昼寝の時間だからといって、じっとしているのはその子にとって苦痛。一人一人に合わせた対応をしている」と説明する。
 同園では、4歳児クラスに上がった当初は、午後になると眠くなる子もいる。 約2カ月たつと体が慣れ、ほとんどの子が昼寝なしで遊べるようになるという。園長は「昼寝をしないようになり、子どもたちが遊び込める時間が増えた。 午前中の活動の続きを午後に継続することもできる」とメリットを語る。

☆多くの園は「日課」
多くの保育園は日課として、給食後に1〜2時間の昼寝を取り入れている。園によっては5歳児について、就学が近づく秋以降、徐々に昼寝の時間を減らすケースもあるが、昼寝を完全になくす時期は短期間だ。
 18年4月、約10年ぶりに改定された保育所保育指針には「在園時間が異なることや、睡眠時間は子どもの発達の状況や個人によって差があることから、 一律とならないよう配慮すること」との文言が盛り込まれた。新指針について 厚生労働省は「3歳以上児においては、保育時間によって午睡を必要とする子どもと必要としない子どもが混在する場合もある。午睡の時間に安心して眠ったり、活動したりできるように配慮する必要がある」と解説している。
 改定に関わった国立青少年教育振興機構の理事長は「昼寝は個人の状況に合わせて行うべきだが、現状では一律に行うところが多い。保育現場に指針の考え方を普及させる必要がある」と話す。

☆「見直し」就学前に
子どもの睡眠に詳しい江戸川大の福田一彦教授(睡眠心理学)によると、米国立睡眠財団が04年に行った調査では、3歳の43%、4歳の74%、5歳の85%が昼寝をしないという結果だった。福田教授が12年に足立区の子ども約2600人を対象にした調査でも、3歳で7割、4歳で8割、5歳で9割の子どもが昼寝をしていなかった。福田教授は「発達段階に合わない不必要な昼寝は、子どもの夜更かしを助長する」と警鐘を鳴らす。 また、子どもの就寝時間を調べたところ、昼寝をする子はしない子に比べ30分〜1時間遅かった。昼寝をしなくなる小学校入学後も、保育園出身の児童は幼稚園出身の児童より就寝時間が10〜15分遅かった。登校渋りや朝の機嫌の悪さは元保育園児の方が多く見られるという。福田教授は「昼寝の強制は生活習慣に大きな影響を与え、小学校中学年ごろまで続く可能性がある」として、就学前から昼寝の習慣を見直すように呼びかけている。

2019年9月8日毎日新聞


台風で小中高は休み…保育所はいつも通り?

 小中高校の場合、学校教育法施工規則で校長の判断で臨時に休校できることが定められ、休校の基準を設けている自治体もある。一方、厚生労働省によると、保育所に関して臨時休園に関する法律がなく、国の指針もない。災害対応をする職業の保護者もおり、全てを閉めると困ることが想定される。一方で、保育士の通勤の負担や安全確保の問題もあり、線引きが難しい。
  一斉に休園した自治体もある。千葉市は9月9日の台風15号接近を前に、8日夜、市内の全ての認可保育所の臨時休園を決め、ホームページなどで告知した。JRが首都圏の在来線の運転見合わせを決めたためで、こうした措置は初めてだという。
  昨年、何度か台風が接近した際、保育士が出勤できず少ない人数で開園せざるを得ないケースを想定し、「早めに保護者に休園を知らせた方がよいのでは」とルール作りを開始。午前6時の時点で特別警報や、避難準備にあたる「警戒レベル3」が発令されたりした場合は休園にすることを、市と認可保育所の間で申し合わせた。

  「国が指針作りを」
災害時の保育所の対応などに詳しい徳島大の中野晋教授(地域防災学)によると、過去の台風や豪雨の際、床上浸水して休園を申し出た保育所に自治体が開園を要請したり、大雨の中、登園しようとした親子が、車ごと水没しかけたりした例もあったという。「一つ間違えば、犠牲者が出てしまう可能性もある」と警鐘を鳴らす。
「どういう条件なら臨時休園するのかを事前に決めておけば、保護者が備えることができる。国が指針を作り、自治体などにルール作りを促すべきではないか」と指摘する。

                          2019年9月18日朝日新聞事